JAXA発スタートアップPenetratorが空き家問題解決に挑む新システムを開発

背景：深刻化する空き家問題

高齢化社会の進展や相続問題の複雑さから、空き家の数は年々増加し、神奈川県相模原市でも特に深刻な状況が続いています。2018年の調査によると、同市の住宅地の約10.4%が空き家として放置されており、適切に管理されていない場合には、雑草の繁茂や悪臭、健康被害などのリスクが伴います。また、市職員にとっても、空き家の実態把握や撤去対応は大きな負担となっています。こうした現状を背景に、JAXA発のスタートアップ、株式会社Penetratorが新たなシステムの開発に着手しました。

Penetratorの新システム「WHERE」

PenetratorのSaaS『WHERE』は、宇宙からの視点で不動産情報を提供する革新的なサービスです。最近、同社は衛星データと水道の開栓・閉栓データを組み合わせ、空き家候補を特定する新しいプロセスを確立しました。このシステムは、相模原市が実施した「相模原アクセラレーションプログラム(SAP)2024」において実証され、空き家の発見精度を大幅に向上させることに成功しました。3月10日には、相模原市に対して成果を報告しました。

衛星データと水道データの統合

Penetratorのシステムは、宇宙からの「鳥の目」と地下の「モグラの目」を駆使しています。水道データは生活インフラにおいて統一化されているため、他の情報と比べて取り扱いが容易です。しかし、水道データだけでは情報ノイズが多く、しっかりとした評価が必要でした。そこで、Penetratorは衛星データと水道データを組み合わせることで、より明確に特定すべき空き家を絞り込むことができました。

実証試験では、相模原市の津久井地区の1,200軒の住宅に対して解析を行い、その結果、579軒まで空き家候補を絞り込むことができました。実際のフィールド調査でも、屋根の老朽化や手入れの行き届いていない庭を持つ住宅が100%正確に特定されました。

高精度な判定とその成果

従来の人手による空き家調査には多くの課題がありました。約3カ月の期間を要し、調査員の判断によって結果がばらつくリスクがありました。しかし、Penetratorの『WHERE』を使用することで、数分という短時間で高精度な判定が可能となります。また、実証の結果、67%の物件が正確に特定されたことも示されており、その信頼性が裏付けられました。