創業364年の老舗旅館に未来を吹き込む二人
神奈川県の箱根に位置する株式会社金乃竹が運営する「松坂屋本店」は、1662年に創業された歴史ある旅館です。この旅館で、2023年の4月、初めての外国籍支配人が誕生しました。それが、ベトナム出身のリンさんと、ネパール出身のサンジブさんです。
二人は2017年に同時期に金乃竹に入社。彼らは日本の接客業における「おもてなし」の本質を追求し続けています。しかしその道のりは、言語や文化の壁、そして老舗旅館ならではの高い基準をクリアすることが求められる厳しいものでした。この記事では、彼らの9年間の成長と「おもてなしの真髄」についてお話しします。
言葉の壁と「目に見えない基準」
リンが乗り越えた言葉の課題
リンは入社当初、日本語に自信が持てず、時にはお客様の質問を誤解してしまうこともありました。その悔しさから、彼女は毎日少しずつ日本語の学習に励みました。「分からないことは必ず確認する」という信念を持ちながら、日本の接客の大切さを実感していきました。
サンジブの「相手を察する」文化への挑戦
一方、サンジブが直面したのは日本独特の「察する」文化です。「自分の仕事が十分だと思ったところで、先輩から『まだできることがある』と言われ、悔しさから行動を観察するようになりました」。彼の成長は、こうした初期の挫折から来ています。
対照的な成長の中で培われた「おもてなし」
約9年の年月を経て、二人はそれぞれの特性を活かしたスタイルで「おもてなし」を具現化しています。
リンの感性
リンは、日本の伝統文化を大切にしながら、細やかな配慮ができる女性に成長しました。女将からの指導のもと、生け花や着付けを習得し、常連客や新しいお客様に対しても愛される存在となりました。彼女の「お客様の気持ちを考えて行動する」という姿勢は、多くの人々に感動を与えています。
サンジブの論理と仕組み
対照的に、サンジブは老舗旅館の業務を効率化する仕組みに情熱を注いでいます。口頭伝達に依存していた業務から脱却し、デジタルツールを導入することで、スタッフが仕事をしやすい環境を整えました。彼のアプローチは、スタッフの業務を円滑にし、サービスの質を保つ要因となっています。
支配人としての毎日と互いのリスペクト
リンとサンジブは、支配人としてそれぞれ異なる日常を持ちながらも、互いへのリスペクトが彼らのパートナーシップを強化しています。忙しい日々の中で、リンはお客様へのお見送りを特に大事にします。一方、サンジブはトラブル時こそ冷静に対応し、問題解決に努めています。
未来を見据えた伝統の継承
364年の歴史を誇る松坂屋本店で、彼らは今後も日本の伝統を継承しながら、国際的なチームとして新たな風を吹き込むことを目指しています。「日本の伝統を守りつつ、やってくる様々なお客様には、居心地の良い空間を提供したい」と話す二人。
これからも彼らの成長とおもてなしの精神に注目しながら、歴史ある旅館が進化する姿を見守りたいと思います。