次世代光通信を支える弱結合型マルチコア光ファイバの評価
光通信技術の進化は、私たちの生活やビジネスに多大な影響を与えています。最近、アンリツ株式会社とフジクラが共同で行った研究により、次世代の光通信システムにおける新たな可能性が開かれました。このプロジェクトでは、弱結合型マルチコア光ファイバの通信品質を複数の測定方式で比較評価。これにより、次世代光通信の実用化に向けた重要な一歩が踏み出されました。
現在の光通信の挑戦
AIやクラウドサービスの需要が高まる中で、光通信の伝送能力はますます求められています。これまでのシングルモード光ファイバが主流でしたが、その技術には限界が見え始めています。従来の方法では、一本の光ファイバに一つのコアしか持てず、これが増大するデータ量に対するボトルネックとなっていました。そこで登場したのが、複数のコアを持つ弱結合型マルチコア光ファイバです。
弱結合型マルチコア光ファイバの利点
この新しい光ファイバ技術の特徴は、1本のファイバに複数のコアを設けることで、より高い伝送容量を実現できる点です。しかし、この技術にはコア間クロストークという問題が潜んでおり、これはコア同士の光の漏れによって生じる相互干渉です。この現象による通信品質の劣化が、技術的な課題として取り組まれています。
測定方式の比較評価
アンリツとフジクラの共同研究では、4つの異なる測定方式を使用し、フジクラ製の4コア弱結合型マルチコア光ファイバのクロストーク量を測定しました。具体的には、光パワーメータを使用した二つの測定方式と、アンリツのOTDRを用いた二つの方式が評価されました。その結果、1550 nmの波長で、各方式の測定値が±1.0 dB以内で一致することが確認されました。
これらの測定方式は、弱結合型マルチコア光ファイバの開発や製造、置設時の評価など、異なる実用シーンでの利用が期待されています。やがては、通信品質の向上や、さらなる技術革新に寄与することでしょう。
標準化への期待
本調査結果は、今後の光ファイバ技術の標準化に向けた重要なガイドラインとなる可能性があります。測定方法の精度向上がもたらすのは、通信網の安定性と信頼性を向上させることです。このことは、データ通信が今後さらに重要視される中で、特に大規模なデータセンターや海底ケーブルを利用する企業にとって、大きな意義を持つでしょう。
OECC 2025での発表
この研究結果は、2025年6月29日から7月3日にかけて北海道札幌市で開催される国際会議「OptoElectronics and Communications Conference (OECC 2025)」で発表されます。発表は7月1日15:15からのセッションにおいて行われ、全世界からの専門家たちに向けて新たな知見が披露されます。
今後もアンリツは、弱結合型マルチコア光ファイバの通信品質の評価を行い、次世代光通信技術の実用化を推進していく姿勢を貫いていくことでしょう。
さらに詳しい情報は、アンリツの公式Facebookページでもご覧いただけます。