川崎市の魅力を再発見する「扇暖簾」
川崎市の老舗居酒屋「戸田ヤ」が発信する独自形状の暖簾「扇暖簾」が、第59回かわさき市美術展において最優秀賞を受賞しました。この作品は、地域文化を形にするアートプロジェクト《imaginary folklore – eye –》として、多くの観客の心を掴んだのです。このプロジェクトは、失われつつある地域の記憶を新たな形で表現する試みであり、暖簾そのもののデザインに新たな命を吹き込んでいます。
扇暖簾のユニークなデザインは、従来の四角い形状から変わり、半円形の柔らかな曲線を持つことが特徴です。この独特な形状は、店舗の入口に優しい印象を与え、来店の敷居を下げる役割を果たします。訪れる人々にとって、温かみのある空間が広がることを意図しています。
伝統と現代の融合
「imaginary folklore」という名称は、古くからの地域文化や記憶を呼び起こし、現代の視点でそれを再構築することを目指しています。この暖簾を通じて、かつてあったけれど失われかけている物語や技術を現代に生かすことが可能になるのです。
このプロジェクトの制作には川崎市伝統工芸館が関わっており、藍染めの技術が用いられています。川崎市伝統工芸館は、藍染めの技術保存と次世代への継承を目的とした活動を行っています。そこから得た知識や技術を駆使して製作された扇暖簾は、深い藍色が持つ独自の色合いと奥行きのある表情を通して、地域文化を見つめる「眼差し」を表現したものです。
未来へつなぐ扇暖簾
扇暖簾の傍らに立つデザイナーの川畑健人氏は、伝統と現代の間に橋を架ける役割を果たしており、アートとプロダクトデザインの融合を目指しています。彼の活動は、「入口をひらく」という視点から暖簾を再定義し、人々と場所を結ぶ存在へと昇華させているのです。このような新たな試みが高く評価され、これまでに京都デザイン賞にも入選するなどの成果を上げています。
今後の展望
扇暖簾は今後も地域の文化や伝統に向き合いながら、新しい形の「入口」を提案する活動を続けていく予定です。川崎市での展示会も行われる予定で、地域の人々が手に触れ、芳醇な文化を感じられる機会となるでしょう。
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
入選作品展:2026年2月19日~2月25日、入賞作品展:2026年2月27日~3月7日。
特別体験
また、川崎市立日本民家園では、藍染めの体験も行っており、事前予約が必要です。この伝統の技術を学ぶことができる貴重な機会となっています。さらに戸田ヤでは、地元で愛される料理を楽しむことができるため、訪れる価値は満点です。
「扇暖簾」を通して川崎の文化の新たな魅力を感じてみませんか。