ヒト細胞骨格の“祖先”を古細菌で発見
近年の科学研究によって、ヒトを含む真核生物の細胞骨格に関する新たな知見が得られました。理化学研究所と名古屋大学、ウィタヤシリメティー科学技術大学院大学、岡山大学、そして科学技術振興機構(JST)からなる国際的な共同研究グループが、約27億年前に誕生したと考えられるアスガルド古細菌を用いた研究を行い、真核生物の細胞骨格の祖先にあたる「原始的な微小管」を発見したのです。
微小管の重要性
微小管は、チューブリンというタンパク質が集まって構成される管状の線維であり、真核生物に共通する細胞内の重要な構造物です。この微小管は、細胞の形状の維持、細胞分裂の調整、細胞内物流の支援など、多くの機能を担っており、細胞運動や機能においても欠かせない要素です。
しかし、これまで微小管がどのように進化してきたのか、その詳細はあまり知られていませんでした。本研究は、この謎を解明するための大きな一歩を踏み出しました。
研究の成果
今回の研究では、アスガルド古細菌の中でも特に近縁とされるヘイムダル古細菌が持つチューブリン様タンパク質を詳細に分析しました。その結果、真核生物の微小管に見られる4つの特性を有しながらも、より細くシンプルな構造を持つ「ミニマル微小管」を作り出す能力を持っていることが分かりました。
この発見は、真核生物の細胞骨格の進化の過程を理解する上で非常に重要であり、ヒト細胞骨格の起源を探る研究に新たな視点を提供するものと期待されています。この研究成果は、2026年7月15日に科学雑誌『Science Advances』に掲載されました。
研究の背景と支援
本研究は、日本学術振興会の若手研究や、理化学研究所の生命機能科学研究センターなど、多くの機関からの支援を受けて進められました。さらに、クライオ電子顕微鏡を用いた構造解析は、岡山大学の国際構造生物学研究センターの協力の下で行われています。このような国際共同の研究体制があったからこそ、今回の重要な発見が可能となったのです。
今後の研究展望
今後の研究では、この原始的な微小管がどのようにして進化し、現在の複雑な微小管へと変化していったのか、一層の解明が期待されます。微小管の進化に関する理解が進むことは、細胞生物学全体の発展に寄与し、私たちの生命の起源や進化に迫る手がかりとなるでしょう。
この研究成果は、科学の最前線にいる研究者たちによっても高く評価されており、生命科学の新たなフロンティアを開くものとして大きな注目を集めています。