日本の水問題に立ち向かう「ジャパン・ウォータースチュワードシップ」始動
2023年3月5日、5社の大手企業が結束し、新たに「ジャパン・ウォータースチュワードシップ(以下、JWS)」が発足しました。この取り組みは、国際的な水の持続可能性に関する基準を推進する組織、Alliance for Water Stewardship(AWS)と連携し、日本国内における水資源管理の強化を目指しています。
日本では現在、水のインフラ老朽化や水道料金の高騰、農作物に影響を与える自然災害など、様々な水に関する問題が顕在化しています。食料の輸入にも干ばつや豪雨が影響し、原材料価格の高騰を招いているのです。このような背景から、企業同士の連携によって水問題に取り組むことの意義が高まっており、JWSの始動は、日本の水資源保全活動のグローバルスタンダードを向上させる大きな一歩となるでしょう。
持続可能な水利用への道筋
JWSでは、スコットランドに本部を置くAWSと連携し、企業が流域における水資源管理を実行する責任を促進します。この取り組みでは、業界を超えた協力の環境を作り、流域での水資源保全に向けた活動が進められます。具体的な施策には、日本語での研修プログラムの提供や企業同士のネットワーキング、流域やサプライチェーンでの共同活動、行政機関との連携が含まれている予定です。AWSは2025年から日本を水資源管理の戦略国として位置づけ、長期的なビジョンを持って活動を進めていくとのことです。
国際的な目標と活動
AWSは、世界温暖化や自然の保護に取り組む国際的な非政府組織と協力し、グローバルな水の持続可能性をリードする機関です。この組織は木・水の持続可能な利用を促進し、現在では200以上の企業や団体が加盟しており、約300の工場が国際認証を取得しています。さらに、さまざまな団体からのメンバー加入も募集しています。
各企業の取り組み事例
MS&ADインシュアランス グループ
この企業は、自然の保全と地方創生を通じた持続可能な社会の実現を目指し、熊本地域での水循環保全に取り組んでいます。地域内の大学や金融機関と連携し、流域治水の仕組みを構築中です。
栗田工業株式会社
水処理技術において広範な製品とサービスを提供しており、環境課題の解決に貢献しています。2020年からは北米や南米、アジアにおける共同活動に参加し、2024年にはAWSに加わり、自社の水資源管理を強化していく方針です。
サントリーホールディングス
国内初のAWS認証を取得したことから始まり、現在は日本企業で唯一の最高位認証「Platinum」を獲得しています。国内企業へのウォータースチュワードシップの普及に努めています。
日本コカ・コーラ
グローバルなネットワークを利用し、流域での水資源管理を進めています。国内外での責任ある水の利用を促進し、多くのステークホルダーと協力しています。
八千代エンジニヤリング株式会社
長年にわたり水循環に関する調査や政策立案に関与し、近年はAWSの導入支援を通じて流域を健全に保つために寄与しています。
未来を見据えた取り組み
AWSの最高経営責任者エイドリアン・シム氏も、こうした企業が直面する水リスクの増加に対して、迅速な行動が 求められると強調しています。「日本の企業が持つウォータースチュワードシップに関する専門知識をいかし、JWSを通じてこの課題に取り組んでいく」と彼は語りました。
ウォータースチュワードシップに向けたこの新たな動きは、日本の水資源管理の未来を変え、持続可能な社会の実現に寄与するものとなるでしょう。日本が新たに開く水の未来に期待が寄せられます。