はじめに
株式会社ハッピーカーズが実施した調査により、中小企業におけるAI導入の状況や経営者の人材戦略に関する認識が浮き彫りになりました。少子高齢化が進展する日本では、特に中小企業が人材不足に悩んでおり、その解決策を模索する過程でAIの導入が注目されています。しかし、AIをどのように活用し、どの業務や職種を残すべきかという判断は未だ定まっていないのが現状です。
調査の概要
対象となったのは、IT・ソフトウェア業、建設業、サービス業の中小企業の経営者です。調査は2025年6月9日から6月11日までの間に、インターネットを通じて行われ、1,007名の回答を得ました。人材不足の実感やAI導入の状況について質問がなされました。
人材不足を感じる経営者の実態
調査結果によると、業種にかかわらず中小企業の経営者の約7割が人材不足を感じており、特にIT・ソフトウェア業においてはその割合が高い傾向にあります。企業の経営が人材不足に逼迫している現状がうかがえ、業務効率の向上やAI導入への興味が高まっています。
業務におけるAIの導入状況
次に、AIの導入状況に関する質問では、IT・ソフトウェア業の経営者の39.7%がすでにAIを導入していると回答しましたが、建設業やサービス業の導入率はそれに比べて低く、多くの企業はAIの導入をまだ検討段階にあります。その要因としては、業種や社内体制、導入目的の明確化の差が考えられます。
AIが解決する業務と人員削減の実態
調査では、AIが導入されている業務として、特に自動化可能な一般事務やデータ入力が挙げられました。これは、AIの実装が比較的容易な領域であり、結果として人員削減に繋がる場合が多いです。それでも、AI導入を行っていない企業では、ほぼ半数が何らかの人員削減を検討していることも明らかになりました。これにより、企業は運営コストを削減し、効率化を目指すという方向へシフトしています。
AIの必要性とその課題
人材不足が予測される中、AI活用の必要性を感じる経営者は約6割に達し、その背景には人手不足への対応があると考えられます。しかし、AI導入に対しては高いコストや社内の専門知識不足等の障壁も存在しています。これにより、単にAIツールを導入するだけでは成果を見込むことが難しいという現実が浮き彫りになりました。
“人にしかできない”業務の価値と求められるスキル
一方で、AIでは代替できない業務として「顧客との信頼関係構築」や「クレーム対応」が挙げられ、これらの業務に必要なスキルとして「コミュニケーション力」や「問題解決能力」が重要視されています。AIが進化するほどに、人間ならではの価値が浮き彫りにされており、これからの業務においてはより多くの非定型スキルが求められるでしょう。
働く人の意識の変化
調査によると、約7割の経営者がAIや働き方の変化により自身の働き方を見直す必要を感じています。デジタル技術の進化に伴い、自身の役割やスキルに対する認識を新たにすることが求められているのです。変化への適応は、新たなスタンダードに近づいており、持続的な成長を遂げるためには、柔軟なマインドセットと継続学習が重要です。
まとめ
今回の調査から、中小企業における人材不足に対してAI導入が有効な解決策と認識されている一方で、導入状況に業種差があることが明らかになりました。また、AI導入が進むことで効率化が進む業務と同時に、人の価値が依然として重要であることも理解されました。AI導入の可否だけでなく、人材戦略や業務再設計が企業の発展において不可欠な要素となっていることを示しています。