2025年度 Kawasaki Deep Tech Accelerator 研究開発型ベンチャー企業成長支援事業に採択
人工心臓の革新を目指すHelioverse Innovations Inc.(本社:アメリカ・オハイオ州)が、川崎市が主催する「Kawasaki Deep Tech Accelerator 研究開発型ベンチャー企業成長支援事業」の2025年度支援先に選ばれました。これにより、電源ケーブルのない超小型人工心臓の実現に向けた研究を加速させることとなります。
現状の人工心臓治療とその課題
近年、人工心臓を使用した治療法は非常に効果的で、末期心不全の患者さんの生存率は70%を超えるに至っています。しかし、従来の人工心臓は皮膚を貫通する電源ケーブルを必要とし、これが感染症リスクを高める原因となっています。現に、約22%の患者がデバイス感染を発症しており、最悪の場合は命に関わるリスクがあります。この問題は、患者さんの生活の質(QOL)を大きく損ない、深刻な課題となっています。
革新的な技術の開発
Helioverse Innovationsは、世界的に評価の高いアメリカのCleveland Clinicの研究チームと、日本の精密工業を支えてきたエンジニアたちとの協力を通じて、電源ケーブルを必要としない完全植込み型のワイヤレス電源システムを開発しています。この新しい技術により、安全に大電流を供給することが可能になります。目標は2030年までに臨床試験を開始することです。
川崎市の支援がもたらす地方のアドバンテージ
川崎市は、日本で最大規模のサイエンスパークをはじめ、多くの研究開発機関が集中しています。このような研究環境で、Helioverseは既にサポーター企業との連携を進めており、新たな接点の構築に向けて動いています。川崎市の製造業集積性を生かし、高性能モーターや精密加工技術、さらには磁気浮上技術など、様々な分野の企業との連携を強化することを目指しています。
未来に向けたビジョン
HelioverseのCEO、黒田太陽氏は、人工心臓開発にあたるメンバーは、様々なバックグラウンドを持っており、国際的な専門知識を有していると語ります。「普通の生活を取り戻す」ことを目指し、患者にとって安全で使いやすいデバイスを開発することが全員の願いです。
川崎市は全国でも医療機器開発に関する集積が進んでおり、NEDOなどの公的機関とも連携体制が整っています。Kawasaki Deep Tech Acceleratorへの参加は、ケーブルのない人工心臓を実現するための大きな一歩です。2026年3月までには補助人工心臓の第1世代プロトタイプを完成させ、前臨床試験に進む予定です。
Helioverse Innovations Inc.の展望
日本における医療機器市場は、輸入に頼る部分が多く、国際競争力の強化が求められています。Helioverseの取り組みが成功することで、日本のものづくり技術が再び世界に注目されることを期待しています。川崎市が持つ製造業のエコシステムと共に、異分野の技術と融合させながら、革新的な医療機器を開発し続ける所存です。
今後、Helioverseが目指す無電源の人工心臓が、どのようにして医療界に革命を起こすのか、期待が高まります。