神奈川県の観光DX推進の全貌
神奈川県は東京都に隣接しているため、観光地としてのポテンシャルが高いにもかかわらず、観光客の約90%が日帰り旅行に留まっています。この傾向を打破し、宿泊客の増加へつながる観光戦略が急務です。そこで、神奈川県観光協会(かながわDMO)が注視しているのは、データドリブンによるマーケティング強化です。これを実現するための「神奈川県観光DX推進 マーケティング強化モデル実証事業」がスタートしました。
1. 取り組みの背景
観光客の層や消費行動を分析し、戦略的なマーケティングを行うためには、データの活用が欠かせません。しかし、県内の観光協会にはそのノウハウや処理能力が不足しがちでした。神奈川県観光協会は、この課題を解決するために、NTT東日本やYDMS、トラベルジップ、makesなどの企業と提携し、共通のプラットフォームを構築することにしました。
2. 事業の内容と構造
本プロジェクトでは、観光データを一元的に管理するデータマネジメントプラットフォーム(DMP)を設計し、観光協会が各エリアに合わせたターゲティングを行えるよう、顧客関係管理(CRM)システムも開発しました。このシステムを利用することにより、観光客の嗜好に合ったプロモーションが実施できるようになります。
(1) DMPの構築
DMPでは、神奈川県が保有する36種類の観光データを統合・分析し、視覚的に理解しやすいダッシュボードで情報を提供します。これにより、各エリアのターゲット層に向けた効果的なマーケティング戦略が立案できるようになります。
(2) CRMの構築
観光に興味を持つユーザーのメール情報を集め、ターゲットに向けてのダイレクトメッセージングが可能な仕組みも構築されました。2025年にはメールマガジンと電子クーポンの配信が開始され、わずか4日間で2,000名以上の会員を獲得することに成功しています。
3. 未来の展望
このプロジェクトはすでに運用を開始しており、データの更新や顧客データの蓄積に力を入れています。今後は神奈川県内の観光振興に向けて、このスキームをより広め、旅行者と地域経済、さらには環境とのバランスを保つ「四方よし」の実現を目指していきます。観光業のデジタル化が進む中で、神奈川県の魅力がさらに広がっていくことを期待しています。