皮膚の状態を短時間で評価する新計算モデルが開発される

皮膚の状態を瞬時に評価する計算モデルの開発

国立大学法人岡山大学とアルケア株式会社が共同で進めた研究の結果、皮膚の状態を迅速に数値化できる新しい計算モデルが開発されました。この成果は特に皮膚の水分蒸散量の評価に関するもので、皮膚バリア機能の定量的な評価が現実のものとなります。これは従来の測定方法に比べて、劇的に時間を短縮し、手軽に皮膚状態をチェックできることが大きな特徴です。

これまでの皮膚バリア機能の評価では、経皮水分蒸散量計を用いた測定が一般的でしたが、測定環境に依存する上、測定には多くの時間を要し、臨床現場では十分に利用されていませんでした。特に、従来の測定方法では、準備や測定にかかる時間が総じて15分以上必要でした。このため、臨床での活用が限られ、皮膚トラブルへの早期対策が実現しづらい現状がありました。

今回新たに開発された計算モデルは、「電気の流れにくさ」と「電気の溜まりやすさ」を基にして皮膚の水分蒸散量を推定することを可能にします。具体的には、皮膚の角層におけるこれらの特性を測定し、わずか5秒という短時間で評価を実施することができるのです。この技術により、角層の厚さや水分量、そして皮膚の水分蒸散量が同時に評価できるため、皮膚科学や美容分野での貢献が期待されています。

研究の背景と目的

岡山大学の研究グループは、皮膚の健康が多くの疾患や美容分野に影響を及ぼすことに注目し、これまで様々な皮膚バリア機能の評価方法を探求してきました。中村隆夫教授は、「肌のバリア機能評価においては、角層の厚さ、角層の水分量、皮膚の水分蒸散量の三つの要素を同時に評価することが重要だ」と述べています。今回の計算モデルは、この目的を達成するために開発されたものです。

この新しい技術は、皮膚科学だけでなく、看護学や化粧品開発など、幅広い分野での応用が期待され、より早期に皮膚トラブルを予防するための新たな手段として注目されています。特に、皮膚疾患は放置すると深刻な症状を引き起こすことがあるため、早期発見・予防が可能となることが大いに役立つでしょう。

技術の具体的な特徴と期待される効果

新しく開発された技術は、臨床現場でも手軽に使用できることが最大の利点です。短時間での評価が可能となることで、皮膚状態の変化を素早く捉えることができ、早急な適切なケアを施すことが可能になります。また、時間がかからない分、患者さんの負担も軽減できるという利点もあります。

さらに、この研究の成果は、2025年9月に「Journal of Medical and Biological Engineering」に掲載される予定であり、学術界でも注目を集めています。岡山大学の研究は、今後も地域医療や産業界との連携を進めながら、地域社会や日本全体の健康に寄与することが期待されています。