中小企業の賃上げ事情:新卒初任給の引き上げと既存社員の対応
株式会社ハッピーカーズが実施した、「中小企業の初任給と給与水準の変化」に関する調査結果から、賃上げの実態が明らかになりました。過去3年間に渡り、初任給の引き上げを行った企業が7割を超えるという結果は、今の時代における雇用環境の変化を如実に示しています。
調査の背景と概要
調査は2025年4月にインターネットを通じて行われ、中小企業の経営者1,005人が対象です。物価高や人材獲得競争が厳しさを増す中、企業の賃上げが求められる現状が反映されています。調査の結果、企業の多くが新卒初任給の引き上げを実施し、特に採用競争を意識した動きが顕著です。
初任給の引き上げ状況
調査に答えた経営者の75.4%が、過去3年の間に新卒の初任給を引き上げたとされています。引き上げ幅は3%から10%未満が主流で、特に「採用競争力の向上」や「物価上昇への対応」が引き上げの理由として挙げられました。若年層の人材確保を優先する企業が増え、賃金の改善が重要視されています。
既存社員の給与に関する取り組み
一方、既存社員の給料に関してはどうでしょうか。調査によれば、全社一律で引き上げた企業は53.0%、一部の社員のみ引き上げた企業が25.2%にあたります。多くの企業がインフレに対する対応として、全社員の給与をまとめて引き上げる傾向が見られます。
特に若手社員をターゲットに給与を上げる企業が多く、対個人のモチベーション向上がその狙いでしょう。給与の引き上げを行った割合には、「モチベーション向上」が55.6%と一位に立ち、経営者が社員のやる気を重視していることがわかります。
賃上げを進める中小企業の課題
賃上げを進める中小企業の多くは、自社の給与水準について「高い」と感じていますが、実際には生活に見合わないという従業員の不満も根強いです。このような理解のズレを埋めるためには、経営陣は「売上・利益の拡大」と「労働生産性の向上」に注力する必要があります。
経営者たちからは「原材料の価格上昇」や「人件費比率の高さ」が賃上げの大きな壁とされています。コスト圧力が多面的に影響を及ぼし、その中で如何に持続的な賃上げを実現するかが今後の大きな課題となるでしょう。
まとめ
調査からは、中小企業において賃上げの動きがある一方で、企業ごとの課題も浮き彫りになりました。新卒の初任給が引き上げられたことで、既存社員との給与格差をどう解消していくかが、今後の注目点となるでしょう。また、労働環境の改善には企業と個々双方が新しい選択肢を模索することが求められる時代に突入しています。賃上げだけでは解決できない課題に対し、企業はもちろん、働く個人も収入の多様性を意識する必要があるかもしれません。