アフリカツメガエルを用いた細菌感染研究の新たな展開に期待

岡山大学の最新研究：アフリカツメガエルを感染モデルとして活用

岡山大学の大学院医歯薬学総合研究科に所属する栗生綾乃さんを中心とする研究グループが、アフリカツメガエルをヒト病原性細菌の感染モデルとして利用可能であることを発見しました。この画期的な研究は、細菌感染のメカニズムを解明し、新しい治療薬の開発につながる可能性を秘めています。

研究の背景と意義

細菌感染症は、世界中で広がる健康問題の一つです。例えば、黄色ブドウ球菌や緑膿菌といった病原菌は、特に免疫力が弱い人々や病院内での感染対策が求められる場面で大きな脅威です。これまで、細菌感染モデルとしてマウスなどのほ乳動物が使われてきましたが、飼育や実験にかかるコスト、倫理的な問題などが課題とされていました。

そこで注目されたのが、アフリカツメガエルです。この生物は、発生生物学の研究でもよく利用されており、ヒトの類似した生理機能を持ち合わせています。研究チームは、アフリカツメガエルがヒト病原性細菌にどのように反応するかを調査しました。

研究成果

研究の結果、アフリカツメガエルが黄色ブドウ球菌や緑膿菌、リステリア・モノサイトゲネスに感染し、死亡することが確認されました。さらに、この死亡は市販の抗生物質によって効果的に抑制されることも明らかになりました。これは、アフリカツメガエルが細菌感染の研究において、実用的なモデルとなり得ることを示しています。

さらに、細菌の病原性遺伝子がアフリカツメガエルの感染死に関与していることが確認され、これにより細菌感染症のメカニズム分析が進むことが期待されます。この研究成果は、2025年5月に米国の科学雑誌『Infection and Immunity』に掲載され、6月号のカバーイメージにも選ばれました。

未来への展望

栗生さんは、今後の研究でアフリカツメガエル体内の細菌感染プロセスをさらに解析し、ヒト病原性細菌の病原性に関わる遺伝子の探索を進める予定です。また、研究に協力してくれたチームメンバーや指導教員への感謝の気持ちも忘れずに表明しています。

本研究の重要性は、単にアフリカツメガエルを用いたことのみにとどまらず、細菌感染のメカニズムを解明し、患者の治療に役立つ新しい薬剤の開発を効率化することにあります。アフリカツメガエルの利用により、抗生物質の効果や細菌の病原性に関する研究が促進されることが期待されています。

このように、岡山大学の研究チームは、未来の医療へとつながる重要なステップを踏み出しています。今後の進展が待たれます。