NVIDIAとケイデンス、AIを駆使したエンジニアリングの世界を変革

NVIDIAとケイデンス、AIを駆使したエンジニアリングの革新

2023年3月18日、米国カリフォルニア州サンノゼに本社を置くケイデンスが、NVIDIAとの継続的な提携を発表しました。この協力関係は、エンジニアリングと科学の分野で広範に応用される最新の技術を駆使して、数々の革新を実現しようとしています。

NVIDIA Blackwellシステムの力

NVIDIAの最新アーキテクチャであるBlackwellを通じて、ケイデンスはエンジニアリングおよび科学的ソリューションを大きく進化させています。この新しいプラットフォームによって、設計者たちはこれまで困難だった大規模な問題に取り組むことが可能になり、さまざまな業界での科学的なイノベーションを加速しています。具体的な成果として、数値流体力学（CFD）のシミュレーション時間を最大80倍短縮することが実現しました。

さらに、Cadence Spectre X回路シミュレータは最大10倍高速化され、熱や応力に関する3D-IC設計の速度も7倍向上しました。これにより、設計者は迅速かつ効率的に複雑な問題を解決することができます。

フルスタックエージェントAIソリューションの導入

NVIDIAとケイデンスは、電子設計やシステム設計、さらには科学的なアプリケーション向けに新しいフルスタックエージェントAIソリューションの共同開発にも取り組んでいます。これにより、設計者の生産性を向上させるインテリジェントな対話型AIアシスタントや深い推論に基づく検証の強化が可能になります。

この協業では、Cadence JedAIプラットフォームとNVIDIA NeMo、さらには新発表されたNVIDIA Llama Nemotron Reasoning Modelの統合によって、設計の生成と最適化が加速され、従来の枠を超えた創造性を引き出します。

創薬分野への影響

さらに、ケイデンスの分子科学事業であるCadence Molecular Sciencesは、NVIDIAのBioNeMo NIMマイクロサービスとの連携を開始し、クラウドネイティブの分子設計プラットフォーム「Orion®」を強化します。この取り組みによって、創薬のスピードが劇的に加速し、科学者が複雑な計算を迅速に行えるようになります。

AI技術を駆使したこの連携により、3D de novoタンパク質構造予測や低分子デザイン向けの生成AI、抗体特性予測のための基礎AIモデルなど、創薬分野における革新が期待されています。

デジタルツインの革新

また、ケイデンスはNVIDIAが提供するデジタルツイン技術を利用し、AIインフラの構築を加速しています。最新のNVIDIA Omniverse blueprintを採用することで、データセンターのデジタルツインを迅速に構築するための正確なモデルを作成し、設計者が電子システム全体の状態を可視化できるようにしています。

この統合により、アナリティクスやコンポーネント管理、製造インターフェースなどさまざまな分野でデータを活用することが可能になり、設計の正確性が向上します。これにより、機器メーカーやデータセンターは、信頼性の高いデジタルツインの構築に役立ちます。

エキスパートの声

NVIDIAの創業者でCEOのJensen Huang氏は、アクセラレーテッドコンピューティングとエージェントAIが業界全体のイノベーションの新たなスタンダードになると述べています。彼は「私たちは共に、シミュレーション、最適化、設計における可能性の限界を押し広げ、効率化を促進し、科学的な発見を後押しする」と強調しました。

ケイデンスのDr. Anirudh Devgan社長は、「私たちは、NVIDIAのGrace Blackwell NVL72プラットフォームを利用し、AI主導のEDAやシステム設計・解析のワークロードを加速することを目指しています」と述べ、シミュレーション技術の革新性に自信を見せています。